fantasy:ファンタジー
堕天使たち(Fallin Angels) -無断転載・流用は禁止です-

■フォーリンエンジェルスとは■
追放された天使たち
天使の対抗勢力。ユダヤ教では、判然としないが、キリスト教とイスラム教の概念では、”悪魔”とは、「罪を犯して天国を追放された天使」つまり”堕天使”の別名であるとされる。
悪魔を意味する言葉にはサタン、デヴィル、ルシファー、デーモンなどがある。

■対向者として登場したサタン、デヴィル■
旧約聖書には、”悪魔”を意味する言葉は存在しない。サタンのルーツである「ハ・サタン(ha_satan)」という言葉があるのみだ。このヘブライ語は固有名詞ではなく、単に「対立勢力」「敵」を意味する不変名詞である。ただしこのサタンは次第に普遍的な”悪”として人格化され人々の前に立ち塞がる。
そして、キリスト教において明確に”悪の権化”、”堕落の誘惑者”としてのサタン像が完成された。
ちなみに、イスラム教ではシャィターン(shaytan)という。
また、デヴィル(Devil)は、旧約聖書をギリシャ語訳した際に、サタンを意味するディアボロス(中傷するもの、敵、偽証者)を使用したことを語源とする。

■荒らぶる神、デーモン■
もともとユダヤ教における”神”は慈愛に満ちて人に対応するばかりではなく、残酷で破壊的な性格、いわゆる「荒らぶる」神としての側面をもっていた。ところが、時代の推移や信仰のグローバルな展開に従い、神は”善”や”愛”の権化そのものと変化していく。そうすると、日々の不幸や悲しみ、悲劇や破壊という”悪”がどこから派生するものかという疑問が生まれる。それに応えるように登場するのがデーモン(Daimon)という言葉である。
この言葉はもともとギリシャ語のダイモン(Dimon)に由来し、「超自然的」「霊的存在者」を意味する。ギリシャでは、人間に突如として訪れる不可解、かつ運命的な出来事は結果の幸不幸に関係なく全てダイモンによるものと考えられていた。つまり、ダイモンは人間が生まれながらにもつ守護霊と見なされていたのである。ギリシャの伝統的な詩人ホメロスの場合も、ダイモンを「神」、または「神の力」という意味で使用している。
ちなみに、その守護霊と人がよい関係にある場合はエウダイモン(endaimon)といい、悪い関係にある場合はカコダイモン(kakodaimon)という表現がなされた。つまり、デーモンは悪である、という図式はなかった。現代英語でも、デーモンは「悪魔」「鬼神」と言った意味のほか「名人」「精力家」といった意味ももつ。
デーモンには以上のように「超自然的存在、神」に似た意味があるが、”愛”の権化たる神が、人間を苦しませるという矛盾がおきてしまった。キリスト教徒の指導者たちはそこで、頭をひねり納得できる一つの概念を作り出した。それが、神の”御使い”だったはずの天使の何人かが神の命令に背いてあろうことか反逆する暴挙に出たとういう解釈であった。
あくまで、言語的な背景をもとにした解釈で、今日ではサタンやデヴィル、デーモンといった本来の意味は歴史の流れで変貌してしまい、これらの言葉の使い分けはさほどその意味をもっていない。

■堕天使はどうして存在するのか■
神の意思か、それとも反逆か
「神の意志を人間に伝えるべき存在である天使からなぜ脱落者を出したのか」中世の神学者はこのテーマに対していくつかの回答を用意した。また、天使たちそのものが悪意の存在であるとするグノーシス派とよばれる思想運動もある。

■1■
神の影の顔

人間にとって眩いばかりの”光”であり、”愛の権化”へと神自身が変貌してしまうと、もともと神がもっていた破壊的性格はどこへいってしまうのか。もちろん、それは消えてなくなりはしない。むしろ、神の恩寵や愛の価値観を高めるためにも、それに対立する存在が一層必要となってくる。障害が大きければ、それを克服する喜びは増すものであり、常に両者の緊張関係を意識することで人は自らの態度を決定しやすくなるからだ。これは言わば神の光と影、コインの両面である。旧約聖書では単なる対立者であった「ハ・サタン」が、悪の権化そのものであるサタンへと変化するのは、言わば当然の成り行きなのかもしれない。神がその勢力を広げれば広げるほど、その影であるサタンも力をつけるのである。だからこそ、サタンは大天使ミカエルの双子の兄弟として瓜二つの姿形をもっているのだ。つまり、サタンは神の意志にもとづいて創造された影の顔、堕天使であるという解釈がなされるのである。
■2■
奢りと自由意志

ある時、神はあまたの天使たちの中で最高の知恵と力を備えた大天使ルシファー(Lucifer)を作った。そして、どの天使よりも重宝し、深く愛したという。彼は”曙の明星”という異名をもち、天界では一際光り輝く存在だった。ところが、絶頂にいた彼の心に影がよぎった。あろうことか、玉座に神に変わって座ろうとしたのだ。これを見た神は、ただちにルシファーを地獄へ突き落とした。奢りによる罪である。
ルシファー程極端でなくても、創造の天使、平和の天使、人間創造に反対した天使、アダムにひざまづくことに反抗した天使など神の意志に反論を唱えて堕天した天使たちも少なくない。
そのほか、神が自由意志をもつ天使たちを作ったという説もある。天使は神の恩寵をたっぷり受けた存在なので、たいていは脱落の道へは進まないものなのだ。しかし何を思ったのか、神はこれらの天使とは違った、言わば亜種ともいうべき天使の一群を作ったという。 恩寵を控えめにして、その代わりに”自由意志”を持たせたのだ。このころ、既に神に反乱を企てる堕天使たちが勢力を強めつつあった。そして、彼らの多くが神に刃向かう側に立つことを望んだという。
■3■
欲望による堕天

「エノク書」における”グリゴリ(Grigori:神の子)”の記述に以下のようなものがある。彼らはアダムの娘たちに欲情を覚え、地上に降りて彼女たちと交わり、多くの混血児を産ませた。しかも、グリゴリたちは人間たちに神から禁じられた天界の知識を惜しみ無く教授したという。こうして神の怒りに触れた彼らは天使専用の獄舎に幽閉されたものの、次々にそこから抜け出して堕天使たちの軍勢に参加したと記されている。

■堕天使たちの大罪と特技■
それぞれの理由によって堕天した天使たちは、ほかの天使を巻き込みながら次第に勢力を増強し、あるときは異国の神々をトレード、または異種配合を行い増殖を繰り返し、ついに天使の軍団に対向できる勢力をもつ大軍団になったという。
あるものは神の破壊的な側面と合体し、悪の指導者たるサタンとなり、またある時は異教の神々や未知の動物、人の恐怖心をあおる生き物としてサタンの追随者と規定されるデーモンとなっていった。一説によると天使の3分の1が堕天使になったという。もっと極端な説、例えば「ヨエル書」によると、天使たちの9割が堕天したというのもある。
彼らの属性は、常に人を堕落へと誘惑する存在であり、その罪悪は通常”七つの大罪”と呼ばれる。それは、「驕り」「強欲」「憤怒」「欲情」「暴食」「嫉妬」「怠惰」である。
絵画や彫刻で表現される悪魔は、醜い表情で頭に角を生やし、ヤギの足をもつ姿で描かれることが多い。これは、ギリシャ神話の牧神パン(Pan)に影響される所が大きい。キリスト教徒が彼を忌み嫌った理由は彼が好色であったから、といわれる。
サタンであれ、デーモンであれ、堕天使であれ、彼らの目的はたったひとつ、「”善”の具現である”神の王国”の創立を根底から破壊すること」である。そのために彼らはある時は変装して人間を誘惑したり、人間の心の内奥まで入り込み、悪の隠微な魅力を唆すのである。もちろん、かつての同僚、天使たちとの闘争も厭わない。



注釈
グノーシス(Gnosis)主義と”悪意の天使たち”
グノーシス主義はキリスト教とほぼ同時期に地中海沿岸でおこった宗教思想運動。キリスト教の分派、異端とも言われるが、本来はユダヤ教やキリスト教の思想をギリシャ哲学などとドッキングさせた宗教運動である。
グノーシスとは、「知識」を意味するギリシャ語だが”人間を救済に導く知識”を標榜したもの。教義によれば、人間は本来、神の内部にある存在だったものが偶然地上に落ち、肉体という衣服に包まれて物質社会に投げ込まれてしまったものだという。従ってその魂は眠っており、本来の自分を忘れているという。しかし、本質的な知識が得られた場合、その魂は覚醒し、敵対する星辰神の領域を突破して、再び神の元へ帰還し、自分自身もまた”神”となる事ができるという。
こうした思想は、キリスト教の一部にも影響を与え、キリスト教グノーシス派という”異端”派が形成される。そのユニークな点は宇宙間でも示されている。古代社会では星や太陽、月などは神的性格をもち、その恩恵によって自然界が秩序正しく運行しているという考えが一般的なのだが、彼らは「地上という物質社会は悪であり、星辰もまた人間の魂に敵対している」と考えた。具体的にその論理を展開すると、7つの惑星は人間に”七つの大罪”を働きかける悪意そのものであり、もちろん惑星を支配する大天使もまた悪意をもつ下級の霊とされる。それは以下のとおり。
惑星名 大天使
木星 傲慢 ザドキエル(zadkiel)
嫉妬 ガブリエル(gabriel)
火星 憤怒 サマエル(samael)
金星 欲情 アニエル(aniel)
土星 怠惰 カフジエル(kafziel)
太陽 強欲 ラファエル(raphael)
水星 虚偽 ミカエル(michael)
グノーシス主義においては、神もまたキリスト教とは大きく隔たった存在である。神にはその母がいる。その名前はソフィア(Sophia)。いわゆるグレードマザー(太母)で彼女こそが神の力の源泉であり、物質世界を創造した”万物の母”なのである。従って、人間にかかわりをもつ”天使”という存在もまたこのソフィアの創造物とされる。人間の魂は神の創造物ではなく、それ自身が神と同等のものであり神と人とは本質的に同等であるというのだ。


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