fantasy:ファンタジー
グリゴリの系譜(Grigri) -無断転載・流用は禁止です-

■グリゴリ■
「堕天使」の記述として最古のものは「エノク書」に書かれている、女性に欲情して堕天使となったものたちの記録である。
今から1万2千年前、「グリゴリ(Grigori)」あるいは「見張るもの(Watchers)」と名付けられた天使の一団が人間に教育するために地上に降り立った。そこで、200人のものたちが、神に禁じられていたにも拘わらず、アダムの子孫の娘たちにひかれ、結婚してしまった。そして、生まれた子供達は背丈が3000キュビット(1350メートル)もある怪物だった。彼らの貪欲はすさまじく、とても人間の作る食料では間に合わない。鳥や獣、魚、さらに共食いまでする有り様だった。
また、彼らは神に禁じられていた”宇宙の秘密”を愛妻に教えてしまった。剣、小刀、楯、胸当ての製造法といった戦争のための道具、腕輪や飾り、化粧法、薬物の扱い方、護符、天文学など、伝授したものは数百にも及ぶ。
その結果、人々は互いに殺し合うようになった。それを知った神は、ノアに指令を出し方舟の用意をさせる一方で、グリゴリたちを逮捕し、幽閉した。そして、神はノアとその方舟の乗員たちをのぞき、地上の一切の命を洪水によって流し去ったのである。
グリゴリは、”天使”と言いながら、全く別の系統に属する存在とも言われる。それは、人間とは異なる他の宇宙の星の住人たちであるとか、”神”と同じ存在であったなどともいわれる。

■神が激怒した本当の理由■
神が人間に知識をもたせようとしなかったのは明確な理由がある。
一旦人が知恵を身につけるとその知識は増大の一途をたどり、神自身の特性である”全知”に成長する可能性がある。人間が神に匹敵する能力をもつことは、神への挑戦にも等しく、そうした傲慢さは、神への反逆にほかならない。
また、アダムとエヴァのいた楽園には”知恵の木”と、”生命の木”があった。この”生命の木”の実を食べると、不死の生命がもたらされる。知識の木の実を食べ、知恵を得た人間がその事実に気づいて、今度は生命の木を食べる可能性が十分にある。これもまた、神の座を揺るがす挑戦である。だからこそ、神は楽園から人間を追放し、炎の剣をもつケルビムたちに命じ、厳重な警備態勢をしいたのである。
つまり、人間が神の対向者となることを、傲慢であり、驕りであると神は憤怒しているのである。

■グリゴリの司令官(Heads of Grigori)■
アザゼル(Azazel)
グリゴリたちの統率者の一人と言われる。アゼザルという名前は「遠くへ去る」という意味がある。もともとはヘブライの神ではなく、シリアの神だったとされる。彼はユダヤ教の”贖罪の日(the Day of Atonement)”に生け贄となる山羊を受け取る悪魔として知られている。
エノクによると、剣・楯などの戦争のための武器の製造法、化粧法を伝えたとされる。
ユダヤの律法学者の間では、彼はアゼル(Azel)と呼ばれ、神から魔術の秘密を盗み出してエヴァに教えた大悪人である。イスラム教徒もまた、アザゼルをアラーに反逆する悪魔と規定しているが、イブリースの名で呼ぶこともある。
彼は、神の軍勢に捕縛されたのち、オリオン座に逆さ吊りの刑に処されたという。タロットカードの”吊られる男”の起源と言われている。
後世の宗教画家に描かれている彼の姿は、7つの蛇の頭と14の顔、そして7対の翼と、異形である。
シャムハザ(Shemhaza)
グリゴリの統率者の一人。他の仲間が人間との結婚を希望したときに、彼のみが反対したという。しかし、結局は多数意見に押され、反逆の主導者となった。
エノクによれば、彼が天使たちを惑わした責任者であり、彼らに悪知恵を授け、娘たちと交わって身を滅ぼすよう仕向けたとされる。
彼は、すべての魔法使いの育ての親、とされている。

■グリゴリの指導者(Leaders of Grigori)■
アルマロス(Armaros)
反逆を唆した張本人の一人。彼は魔法や妖術をいかにして無効にするか、つまりは護符についての知識を人々にもたらしたという。さらに、最も秘密とされる神の名前を人々に漏らした大罪人と言われる。
バラキエル(Baraqijal)
もともと人間の女たちを団結させるため神に遣わされた存在だった。しかし、占星術という最も神秘的な学問を人々に漏らしてしまった。
コカビエル(Kokabiel)
星と星座の運行をつかさどる天使のリーダーだった。人間の娘たちの誘惑に負けて、星座が見せる兆しの秘密を教えてしまった。
タミエル(Tamiel)
天文学についての権威であった。星の観察方法を人々に知らしめた。おそらくは暦を作るためだったと言われる
サハリエル(Sahariel)
シリア文字による呪縛魔術(相手を金縛りにする)のオーソリティとして知られていた。彼の魔術能力の秘密は月にあるらしく、月の満ち欠けや、その運行についても、その深い知識を人々に授けた。
ペネムエ(Penemue)
本来子供達を守護する任務を与えられていた。紙とインクの製造法、そして筆記法を人間に教えた。この行為が神に与えられた使命から逸脱していると罰せられた。
サタナイル(Satanail)
かつてはグリゴリの指導者として活躍していたと思われる。しかし、エノクによれば、サタナイルはグリゴリたちの大事件の前にすでに神による処罰を受けていたようだ。彼とサタンを同一人物であるとする悪魔研究家もいる。



注釈
なし。


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