小説
FE短編小説 -聖戦の系譜-

ティルテュ
貴方はいつも優しく微笑んでくれたわね…?最後まで…。
でも、酷いわ…私を置いていってしまうなんて……。
たった一人で逝ってしまうなんて…。私はこれからどうすればいいの?
貴方のいないこの世界でこれからどうすればいいの?
私を置いていくなんて酷い人…。
私も一緒に連れてってくれてば良かったのに…。
貴方のいない世界で私に生きていけというのね…?
貴方がくれたモノ……指輪がわりのお揃いのペンダント…………そして、小さな生命…。
「かあさま…お話して?」
小さなアーサー…。私と貴方の子供。
「何の話がいいかしら…?」
「…かあさまのだいすきなお話!!」
可愛いアーサー…貴方がくれた生命のうちの一つ…。
「ティニーもききたいよね?」
まだ、話す事もできない小さな小さな生命…貴方が最後に私にくれたモノ…。 
貴方は微笑んでくれなくなったけれど、代わりにこの子達が微笑んでくれるわ…。
私はこの子達の微笑みを守りたい…。
……貴方が私だけを残して逝ってしまったと思ったけれど、違ったわね…。
私にはこの子達がまだいるわ…。私はこの子達を守らなければ…ね?
「かあさまぁ〜?」
「ああ…ごめんなさい…」
この子達だけは守って見せるわ…。
「じゃあ…『あるところにいたお姫様が悪い王子様に囚われになりました……」
そう…すべての始まり……。この子達は忘れるかもしれない…。
それでも、知っていて欲しいと思うの…。あの戦いといえない戦いを…。
貴方を愛したという事を…貴方に愛されたという事を…。
御伽噺のように話しているけど…。現実はそんなものじゃなかったってわかっているけど…。
憶えてくれてるといいな…。
アーサーがこの中に出てくる聖騎士達のように…愛する人を守れるように…。
ティニーがこの中に出てくる聖騎士達のように…愛する人を助けれるように…。
願ってるの…。
忘れるかしら…?憶えてくれている…?
私はずっと、話し続けるわ…。私の命が尽きるまで……。
「やあ、山を越えるんだったら、僕も乗せてくれないかな?妹を助けに行くんだ…」
アゼル
「アゼル〜、早く早く!!」
紫銀の髪を揺らして少年の前を走って行く少女。
少年・・・アゼルは苦笑しつつも追いかける。
「はあ・・・ティ、ティルテュ・・・」
やっと追いついた・・・というか少女が待っていた場所は・・・雪で町並みが輝く丘の上だった。
そう・・・ここはシレジア。
少女・・・ティルテュにとっても、アゼルにとってもはじめての地なのだ。
「アゼル、体力なさ過ぎ〜」
ティルテュが笑う。
アゼルはそれを見て微笑む。
ティルテュは顔を赤くしたかと思うと、アゼルに背を向けた。
「綺麗でしょ〜?」
「うん、綺麗だね・・・」
寒いけど・・・とアゼルがそう付け足すと、ティルテュがくるりと振りかえって、
「・・・アゼル〜、情緒なさすぎー」
ちょっと膨れて文句を言う。
「え?あ・・・ご、ごめん・・・」
何故か気弱に謝ってしまうアゼル(笑)
「・・・エーディンの結婚式・・・綺麗だったね・・・?」
唐突にティルテュがそういう。
「え?あ、うん、そうだね・・・?」
アゼルはわけがわからないままに頷く。
「・・・本当に良かったの?」
ティルテュがそう訊く。
「ティルテュ・・・?」
ティルテュにしては珍しい、不安そうな声にアゼルは訝しがる。
「だって、アゼル・・・エーディンの事好きだったんでしょ?」
なんとなく、ティルテュの言いたい事が分かってきた・・・。
「ティルテュ・・・あのね、エーディンはジャムカがいいんだって」
ティルテュは不安そうな顔から困惑げな顔をする。
「ティルテュは、僕じゃなくてもいい?」
ティルテュは慌てて首を横に振る。
「・・・エーディンの事は好きだったよ・・・それは否定しない」
アゼルはティルテュの瞳をしっかりと見つめて、
「今は、ティルテュを愛してる・・・」
はっきりという。
ティルテュは顔を赤らめながらもアゼルに抱きつく。
アゼルの耳元で囁くかのように・・・あたしも・・・
『アゼルを愛してる』 

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